受講者の学習ストレスを減らす! 受け取られやすい情報提供の仕方② 言語と非言語のバランスを取る 編
新しい仕事、新しい習慣、新しい人間関係……。私たちは慣れないことを行うと居心地の悪さを感じます。
ではなぜ慣れ親しんだ職場、行動、人間関係はあなたを安心させるのでしょうか。
それは、自分がどのように振舞えばよいかよくわかっているからです。
これから何が起こるか分からないという状況は、自分が思っている以上にストレスを感じさせます。
研修もそんなことの一つです。
慣れない場所に行き、知らない人と隣り合わせて、内容によっては初めて見聞きすることを学ぶ……。
受講者は有形無形のストレスにさらされています。
そんな中、私たちは少なくとも「学ぶこと自体のストレス」を減らすための工夫はできます。
では具体的にどのようなことに気をつければよいのでしょうか?
そこで今回は、
受講者の学習ストレスを減らす! 受け取られやすい情報提供の仕方
その2 言語と非言語のバランスを取る 編
をお届けします。
これらに気をつけることで、受講者の学びのストレスを低減して研修内容を受け取ってもらいやすくなるでしょう。
受講者の「学ぶこと自体のストレス」を減らすための工夫については、このブログでも扱ってきました。
例えば、
コミュニケーションの質・量を高める
研修の「実施方法」と「内容」をマッチさせる
集中力と学習効果が高まるように時間を配分する
または前回のブログでご紹介した
などです。
今回の工夫は「言語と非言語のバランス」についてです。
つまり、言語メッセージと非言語メッセージを調和させて情報を伝えましょう、という話です。
説明の必要はないかもしれませんが、言語メッセージと非言語メッセージについて簡単に触れておきます。
言語メッセージとは、話された言葉の内容そのものや、文字情報によって伝わるメッセージのことです。
講師の話した言葉の意味やパワーポイントで映写された文字情報がそれにあたります。
このブログに書かれた文字はすべて言語メッセージです。例えば私が
馬鹿
と書けば、この文字列が意味しているメッセージがあなたに届きます。
非言語メッセージとは、言葉の意味以外のすべてによって伝わるメッセージのことです。
表情、視線、姿勢、ジェスチャー、声のトーンやスピード、ため息、沈黙、雰囲気などなど。非言語メッセージはそれ単体でも発せられますが、通常人が言葉を発するとき、言語メッセージが非言語メッセージを伴わないときはありません。
そして、しばしば非言語メッセージは言語メッセージよりも強力です。人は「言っていること」よりも「やっていること」を取るからです。
人類の歴史において、ほとんどの期間は非言語メッセージでコミュニケーションが行われていました。言語はいわば新参者です。それを考えると非言語メッセージの強力さもわかるというものです。
上で書いた
馬鹿
ですが、これをどのような雰囲気、表情、声のトーンで発するかによって、意味は180度変わってくるでしょう。
今回のブログのテーマは、受講者の学ぶこと自体のストレスを減らすにはどのようなことができるか、です。
ではなぜ、講師が言語と非言語のバランスを取ることが受講者の学ぶことのストレスを減らすことにつながるのでしょうか。
それは、「非言語メッセージは言語メッセージよりも強力」なことに関係があります。
人は「言っていること」よりも「やっていること」を取る、とも書きました。
つまり、講師の発する言語メッセージと非言語メッセージがちぐはぐな場合、受講者は複数のメッセージを同時に受け取ることになります。
その結果、意識する/しないに関わらず受講者は混乱してしまうからです。当然学びにとってメリットはありません。
言語メッセージと非言語メッセージがちぐはぐ(ミスマッチしている、と言います)な分かりやすい例は、
・怒ってない、と言いながら声のトーンや表情は明らかに怒っている
・会えてうれしいです、と言いながら体や足の向きは離れる方向を向いている
・おいしいね、と言いながら箸が進んでいない
などですね。
上記は日常における普通のコミュニケーションの例です。ですが、ここで話題にしている状況は研修、関係性は講師と受講者です。
そして、研修で行われるのは普通のコミュニケーションではなく、何らかの情報や技能を伝達することです。
そのような状況で、講師として「言語と非言語のバランスを取る」ために、私たちはどのようなことができるでしょうか。
もしあなたが何かを学びたいとして、このような人から教わりたいと思いますか?
・人の話を最後まで聞かないコミュニケーション講師
・太っているダイエットコーチ
・自信がなさそうなプレゼンテーション講師
これらの人に実際に能力があるかないかは分かりません。ですが、受講者に伝わるのは「言っていることとやっていることが違う」という情報です。
講師は自分が本当だと信じていること、心から良いと思っていること、そして自分自身実践していることを伝えることをお勧めします。
その「言っていることとやっていることの一致度」が有形無形の力となって受講者に届きます。
逆に、信じていないこと、良いと思っていないこと、実践していないことは研修のテーマとして選ばない方が無難です。
オモテに表れなくとも、「自分では実践していないけど教えるのが仕事だから」という現実は、研修の足を引っ張りこそすれプラスに働くことはありません(教科書的な情報、事実を一方的に伝えるという研修はまた話が別です)。
とはいっても、仕事や状況によってはそうも言っていられないこともあるでしょう。
そんな時、講師として言語メッセージと非言語メッセージがミスマッチしないようにできることはなんでしょうか?
それはもしかしたら一番簡単なことかも知れません。自分でいること、です。
話に力が入ってきたら身振り手振りが大きくなり、楽しい事例を話すときは笑顔になり、興味深い質問を受けるときは目を見開き……。
これらはしようと思ってしているわけではありませんよね。人間として自然な反応です。「自分でいる」とは、その自然な反応を止めないことです。
時として直立不動でにこりともしない講師を見ることがありますが、内容が良くとも受講者に不自然な印象が伝わっているかもしれません。
また、受講者のことを第一に考えた上で、自分に無理のないスタイルで、使い慣れた言葉を使うということも自分でいることにつながります。
一致度と同じく、講師の居心地の悪さも受講者に伝染してしまうからです。
▼ メールニュースご登録のおすすめ
今回のブログはいかがでしたか?
もし今後もご笑覧いただけるのでしたら、弊社のメールニュースをご登録ください。月イチで最新ブログ情報をお届けします。
https://www.iryos.co.jp/mailnews/
※ 研修関連(研修実施者/受講者サポート)に☑してください。
佐々木 啓
▼所属:株式会社チーム医療ラーニングS / 株式会社チーム医療ラーニング
▼資格:公認心理師 / ICC認定国際コーチ / 同国際チームコーチ/同国際ライフコーチ / ICNLP認定NLPトレーナー
▼略歴:1998年より、教育研修会社にて心理療法研修のマネジメントに従事。国内外の一流心理療法家の技能と研修ノウハウを学ぶ。10年間の修行の後、2008年から自らも講師として活動を開始。現在に至る。その人の特性や課題に最もマッチしたアプローチを、多種多彩な心理療法から選んで構成する研修やコーチングが強み。「不健康な状態で行う思考の質などたかが知れている」を信条に、まず個人の心身を整える実習やエクササイズが得意。