オンライン時のカメラのオン・オフについて考える~講師側の都合と受講者側の言い分
オンライン研修は、受講者が得られる情報の質・量ともに、リアル研修に比べて低くなっています。
その理由として、オンライン研修は、「PCやスマホの画面の映像」と「器機を通した音声」に限定された情報のやり取りだから、ということが挙げられます。
→コミュニケーションの質・量を高める! オンライン研修における「講師の見せ方」5つの工夫
もちろん、得られる情報の質・量が低いというのは、講師の立場でも同様です。
だから講師は、少しでも受講者の反応を知りたくて「カメラはオンにして参加してください」とお願いするわけです。
でもちょっと待った! そのお願いはよくよく考えた上でのことですか? カメラをオンにする受講者の負担と引き換えにできることですか?
そこで今回は、「オンライン時のカメラのオン・オフについて考える~講師の都合と受講者の言い分」についてご紹介します。
あなたがオンライン研修を実施するとき、カメラのオン・オフをどのように扱うかのヒントになると思います!
■ 動画版
このブログにおける「オンライン研修のカメラのオン・オフ」とは、ZOOMの使用を前提にしています。
ZOOMミーティングルームに入室すると、画面の右下にカメラのオン・オフを操作するボタンがあります。
(ZOOMでは「ビデオの停止」と「ビデオの開始」と表示されます)
・ボタンに斜線が入っているときはカメラがオフになっています。
画面にはあなたの名前やアイコンが表示され、あなたの姿はZOOMに映りません。
・「ビデオの開始」ボタンをクリックすると斜線が無くなり、カメラがオンになります。
画面にはカメラがとらえたあなたの姿が映り、ZOOMミーティングルームに入室している人に映ります。
・「ビデオの停止」ボタンをクリックすると斜線が入り、カメラがオフになります。
何しろオンライン研修は得られる情報が少ないです。
受講者のカメラがオフの状態では、
自分が示したことに対して、受講者はどのくらいうなずいているか、それとも首をかしげているか、不審な顔をしているか。
それらのリアクションが分からないので、内容を変化させたり、理解を確認する質問を交えながら、研修を柔軟に進行することができません。
その点、受講者の姿を見ながら研修することができれば、自分の行っていることの反応がダイレクトに得られます。
講師側としては、カメラをオンにしてもらうことで、受講者に良い学びを提供できているか、という疑念を抱えることなく安心して研修することができます。
「カメラの向こうには受講者がいる」
頭ではそう分かっていても、実際目の前にあるのは人の姿の映っていないモニターだけ。
自信のある内容も準備してきた決め台詞も、リアクションがないと受け取ってもらっているのか分からない。
モニターの前に独りぼっちの講師は、まるで独り言をつぶやいているかのよう。
いきおい研修のエネルギーも低くなります。
「やはり目の前の誰かに向かって語りかけなくては! 講師のエネルギーをぶつけるような研修をしなくては!」
「そして、受講者側も見られていると思えば、緊張感を保ちながら集中して受講してもらえる!」
講師側としては、カメラをオンにしてもらうことで、講師のエネルギーが高まり、それを受講者に届けることで研修の質を高めることができます。
講師としては、受講者がどのような状況で研修に参加しているか知りたいところです。
例えば……
・不正に受講している人がいるかも
これは受講者を広く一般に募るオープン研修で起こり得ます。
参加費は一人分しか支払っていないのに、オフにしたカメラの向こうには複数人が不正に受講しているかもしれない。
特に研修の主催者としては確認したいポイントです。
・研修にまったくコミットしていない人がいるかも
これは社内研修などの受講が義務付けられているクローズド研修で起こり得ます。
ZOOMミーティングルームに入室したはいいものの、あとは積極的に研修に参加せず、時間が過ぎるのを待っている人がいるかもしれない。
特に研修の依頼者としては確認したいポイントです。
講師側としては、カメラをオンにしてもらうことで、受講者の研修へのコミット度を確認することができます。
つまり、講師側の都合をまとめると、
受講者の顔が見えると安心できて、エネルギーの高い良い研修になる。
それに研修にコミットしてるのならカメラをオンにしなさいよ。
ということになります。
オンライン環境があればどこからでも受講できるのがオンライン研修の良いところ。
なのに、「カメラをオンにしてください」と言われるとその状況が一変します。
人によるとは思いますが、ぱっと思いつくだけでもこれだけの準備が必要です。
・人に見られてもよい服装に着替える
・髪形など身だしなみのチェック
・お化粧や髭剃り
・カメラに写り込む部屋の片づけ
・カメラの映り方のチェック
部屋の片づけがある分、リアル研修に参加するより面倒くさいことになっています。
受講時間より準備時間の方が長くなってしまう人もいるのでは?
受講者側としては、カメラをオフにすることで、面倒くさい準備を省くことができます。
研修に参加する際、受講者は講師や他の受講者と顔を合わせることになります。
ですが、そのようなリアル研修とオンライン研修では大きな違いがあります。
それは、受講者はカメラをオンにすると、「自分の顔を常時、それも正面から誰かに見られることになる」ということです。
それだけでもかなりの精神的負担になることは想像できます。
(あなたもそんな経験がおありなのではないでしょうか)
水分補給やちょっとした伸びはギリギリセーフでも、体が求めているあくび、食事しながらの受講、疲れたから横になる、などは不可能でしょう。
そのような精神的にも肉体的にも窮屈な状態で、良い学びが得られるとは到底思えません。
受講者側としては、カメラをオフにすることで、自分がリラックスできる自由なスタイルで受講することができます。
オンライン研修にはオンライン研修ならではのメリット・デメリットや特性があります。
それらを理解して、オンライン研修にマッチした内容と進行方法を練らなければ、よりよいオンライン研修は実施できません。
それを怠ると、講師からの一方通行の情報提供、一方通行のコミュニケーションに終始した研修になってしまいます。
受講者側としては、カメラをオフにすることで、得られるものはありません。
ただ、そのような一方的に受け取るだけの研修で、カメラをオンにする必要性を感じないだけです。
つまり、受講者側の言い分をまとめると、
私たちは自由なリラックスできるスタイルで受講したい。
カメラをオンにさせたいなら、それだけの理由を示しなさいよ。
ということになります。
とはいっても、状況によってはカメラをオンにしなければならない場合、した方が良い場合もあります。
例えば……
・社員研修などでカメラのオンが義務付けられている場合
出席確認や受講態度を見るために必要です。
業務の一環ですから仕方がありません。
・エクササイズがある研修の場合
ZOOMのブレイクアウトルームに分かれてのエクササイズが予定されている研修で、さすがにカメラをオフのままではまずいでしょう。
・関係性ができている小グループの研修の場合
定期的に開催されて、関係性ができているグループでは、むしろカメラをオンにした方が学習効果が高いかもしれません。
・そもそも受講者がカメラをオンにする気満々の場合
カメラをオンにすることで「私はここにいて、ちゃんとあなたの話を聴いているよ」と示したい受講者もいます。それを押しとどめるものは何もありませんね。
さて、カメラをオンにさせたい講師側の都合と、カメラをオフにしたい受講者側の言い分、あなたはどちらにシンパシーを感じますか?
お互いの立場に立てば、どちらも十分理解できる内容です。
ではどうすればよいのか?
私たちのおススメは(もちろんオンライン研修の内容を練り上げたうえで)、「選択」と「お願い」です。
具体的に言うと、
・受講者には、「カメラのオン・オフはご自由に」と選択を与える
・講師がカメラをオンにしてほしい場合は、受講者にお願いする。
例えば、
「いま目の前には真っ暗な画面が広がっていまして、皆さんの姿を見ることができません。
私としては受講者のみなさんのお姿が見えた方がエネルギーをもって伝えられますし、皆さんの反応が見えた方が安心します。
結果として良い研修をお届けできると思うのですが、もしカメラをオンにしてもよいという方がいらっしゃったらご協力いただけないでしょうか?」
このお願いをきいてカメラをオンにしてあげようと思えばそうすればよいし、でも準備ができていないからとオフのままならそれでもよいし、というわけです。
「カメラをオンにしてください」、逆に「オフにしてください」と強制したり、
「何がどうあってもカメラをオンにしない」とかたくなな態度を取ったり、
それらよりは双方にとってフェアだと思うのですがいかがでしょうか?
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佐々木 啓
▼所属:株式会社チーム医療ラーニングS / 株式会社チーム医療ラーニング
▼資格:公認心理師 / ICC認定国際コーチ / 同国際チームコーチ/同国際ライフコーチ / ICNLP認定NLPトレーナー
▼略歴:1998年より、教育研修会社にて心理療法研修のマネジメントに従事。国内外の一流心理療法家の技能と研修ノウハウを学ぶ。10年間の修行の後、2008年から自らも講師として活動を開始。現在に至る。その人の特性や課題に最もマッチしたアプローチを、多種多彩な心理療法から選んで構成する研修やコーチングが強み。「不健康な状態で行う思考の質などたかが知れている」を信条に、まず個人の心身を整える実習やエクササイズが得意。