想定と違う! 実践から見るハイフレックス型のリアル
先日、私たちはある研修を開催しました。
その実施方法は、ここではまだご紹介していない「ハイフレックス型のハイブリッド研修」というものです。
私たちにはそのノウハウがあります。
様々な機材のセッティング
研修当日の講師・スタッフの動きの確認
ハイフレックス型に適した研修内容と進行の仕方
などなど十分な準備とリハーサルを済ませて研修に臨みました。
そして当日。
ある程度覚悟していた想定内のことに加え、
今回は思いもよらない想定外のことが起き、
大変でありながら楽しく、私たちにとっても学びの多い研修となりました。
そこで今回は、
「想定と違う! 実践から見るハイフレックス型のリアル」
についてご紹介します。
今回の内容で、ハイブリッド研修のハイフレックス型とは何か。
そして、その現場ではどんなことが起きるのかについて、理解できると思います。
■ 動画版
ハイブリッド研修とは、「実施方法の異なる複数の研修を組み合わせた研修」のことです。
このブログでご紹介してきた、リアル研修、オンライン研修、オンライン動画を組み合わせたもの、と理解してください。
さらに、ハイブリッド研修は、ブレンド型とハイフレックス型に分けられます。
ブレンド型とは、実施方法の異なる研修を順番を決めて別のタイミングで組み合わせて行うもの
例えば、基本的な知識をオンライン動画で学んでから、リアル研修で実践練習をする、などです。
対してハイフレックス型とは、実施方法の違う研修を同時に行うもの
例えば、リアル研修を実施しながら、それをオンライン研修として配信する、などです。
私たちが開催したのが、この「ハイフレックス型ハイブリッド研修」です
このハイフレックス型ハイブリッド研修のメリットを二つ挙げましょう。
・より多くの方に参加してもらえる
遠出ができない、時間がない、人との交流が得意でない、という方
→オンライン研修に参加
実際に講師に会って話が聞きたい、他の受講者との交流が楽しみ、実体験したい、という方
→リアル研修に参加
というように、両者のニーズにこたえることで、より多くの方に参加してもらえます。
・社会情勢の変化に柔軟に対応できる
伝染病の蔓延や、天候不順などによる交通機関の不通が起きた場合
→オンライン研修オンリーに切り替えて実施することができます。
ハイフレックス型のハイブリッド研修について、ここまでいいことばかり言ってきました。
ですが、ご想像の通り、同じくらい大変なこともあります。
ここではハイフレックス型ハイブリッド研修を実施するときの課題/問題を二つ挙げましょう。
・トラブルが起きがち
一つ一つの研修開催でも注意する点がたくさんあるというのに、
ハイフレックス型は異なる種類の研修を同時に進行します。
当然、環境的な準備や進行・運営が複雑になるので、トラブルが起きがちです。
・受講者への注目の配分が難しい
ハイフレックス型は、リアル受講者とオンライン受講者の相手を同時にします。
そのため、双方への対応を入念に準備しないと、リアル研修とオンライン研修のそれぞれの強みを生かせない、中途半端な学習効果に終わってしまいます。
ハイブリッド研修の受講者の片方、オンライン受講者は、リアル受講者に比べて受け取れる情報の質・量ともに低くなっています。
例えば視覚情報はPCのモニターの大きさに依存しているので、スライドの小さい文字は読み取ることが難しいです。
また、リアル研修のように一枚のスライドを映写し続けると、画面に変化が少なく集中力が低下してきます。
そこで、オンライン受講者のために
一枚のスライドに表示する情報は少なく
その代わり文字を大きくして見やすくし
テンポよくスライドを切り替えることで画面に変化を与える工夫をしました。
そして当日に起きたこと。
オンライン受講者用のスライドのテンポでは、リアル受講者がメモを取る時間が全く足りない
普通のリアル研修では、スライド一枚に複数の情報が表示されます。
そして、講師がその中の1トピックを説明している間、受講者はメモを取る時間が確保されています。
今回のハイフレックス型はその間合いが取れないので、リアル受講者のために
研修を撮影した動画で後日振り返ってもらう
スライドのポイントを抜粋した配布資料を渡す
という対応を取りました。
しかし、その場でメモを取りたい熱心なリアル受講者の方々にとっては、まだまだ不十分だったようです。
この件、対策として、
次回はリアル受講者のために内容のすべてをカバーした配布資料をお渡しして、メモを取る時間を節約できるようにしたいと思います。
講師には自分の受け持ち時間があります。
その与えられた時間内で、過不足なく、自分が担当する内容を受講者に伝える必要があります。
ですから、自分が準備したコンテンツの導入にどれくらいかかるか、リハーサルをして時間を計測するわけです。
レクチャー部、エクササイズ部、質疑応答部と、実際に声を出しスライドを使いながらストップウォッチで計時します。
その結果によって、ボリュームと使える時間を調整し、本番に臨みます。
そして当日に起きたこと。
リハーサルはばっちりでも実際は予定より時間が伸びてしまう
上記のとおり、スライドは一枚一枚の情報量は少なく、ポイントのみ表示するスタイルでした。
それを一人でリハーサルしている時はうまくいきました。
ですが、実際リアル受講者を目の前にすると、伝えたい事、補足がいっぱい出てきてしまうのでしょう。
この件、対策として、
次回は内容をもっと絞って、山ほどの補足を想定した余裕を持った時間配分にしたいと思います。
研修にはちょっとした変化、小さな変化、大きな変化などメリハリをつけることが大切です。
そういった変化が受講者の集中力を維持させる工夫です。
そして、受講者の集中力を維持させるには能動的・主体的に作業してもらうのが一番。
つまり実習、エクササイズです。
リアル参加者の実習はいつもどおりですが、オンライン受講者へのそれはひと工夫もふた工夫も必要です。
なぜなら、オンライン受講者同士が実習に入ってしまったら、講師はその様子を把握するのが難しいからです。
そのため、オンライン受講者が小部屋に分かれるZOOMのブレイクアウトルームでの実習時は、
実習の内容
誰がどのような役割を担うか、
時間が余ったらどうするか
など、かなり詳しく図示し、それを画面共有して見せる準備をしました。
これでオンライン受講者も戸惑うことなく実習してもらえるだろう、と万全の態勢で待ち構えていたのですが。
そして当日に起きたこと。
ブレイクアウトルームでの実習をパスする人が多かった
受講者には、実習の参加/不参加の選択を与えていました。
やりたくないことはパスできる、という安心感を持ってもらうためです。
ですから、何人かはパスする方がいるかな、とは思ってはいました。
ですが、ふたを開ければ毎回パスする方が半数以上いらっしゃったのです。
この結果は、研修のテーマと関係しているのかもしれません。また、
実習の時間帯が早かった
難しい課題だった
受講者の体調が悪かった
など、いろいろな要因が考えられます。
ですが、こういうこともあるんだなあ、とビックリ。
この件、対策として、
セルフワーク、つまり自分で考えてもらってチャットで共有するという実習は積極的に入力してもらったので
チャットを使った実習を多くする
そして
ブレイクアウトルームのパスが多い場合は、チャットへの入力実習に切り替える
という対応をしたいと思います。
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佐々木 啓
▼所属:株式会社チーム医療ラーニングS / 株式会社チーム医療ラーニング
▼資格:公認心理師 / ICC認定国際コーチ / 同国際チームコーチ/同国際ライフコーチ / ICNLP認定NLPトレーナー
▼略歴:1998年より、教育研修会社にて心理療法研修のマネジメントに従事。国内外の一流心理療法家の技能と研修ノウハウを学ぶ。10年間の修行の後、2008年から自らも講師として活動を開始。現在に至る。その人の特性や課題に最もマッチしたアプローチを、多種多彩な心理療法から選んで構成する研修やコーチングが強み。「不健康な状態で行う思考の質などたかが知れている」を信条に、まず個人の心身を整える実習やエクササイズが得意。