これでもう怖くない! 研修における質問の受け方・答え方-その1 満足度の高い研修と質疑応答 編
現代は情報で満ち溢れています。
欲しい情報は書籍やインターネット、動画やDVDからいくらでも得ることができます。
これらの媒体は、おそらく講師が話す内容よりも正確で、詳しく、分かりやすくまとめられており、しかも好きなタイミングで学べます。
では、そのような状況で「研修」を行う意義はどこにあるのでしょうか?
答えの一つは、講師と受講者、受講者同士のやりとり。つまり双方向コミュニケーション、コール&レスポンスです。書籍や動画は「わたし」のことを知りませんし、質問しても答えてくれませんよね。
さて、研修における双方向コミュニケーションにおいて重要なのが質疑応答の時間です。
「良い質問の答えは良い研修をつくる」という言葉もあるくらいです。
ですが、講師として活動している方の中にも
「質問に上手く答えられるか不安……」
「質問が終わっていないのについ答え始めてしまう……」
「質問がない時の沈黙の時間に耐えられない……」
「どうやって答えてよいか分からない……」
という方もいらっしゃるようです。
そこで今回は、
これでもう怖くない! 研修における質問の受け方・答え方
その1 満足度の高い研修と質疑応答 編
をお届けします。
オンライン研修、リアル研修、どちらにも応用できる内容です。
質疑応答の時間をより良いものにすることで、あなたの研修がパワーアップすること間違いなしです。
質疑応答に関してはさまざまな視点で語ることができます。
そこで、このテーマを
・なぜ質疑応答が大切なのか
・質疑応答をすると何が起きるのか
・何を準備すれば活発な質疑応答になるのか
・良い質疑応答のために、どのように質問を聞き、どのように答えればよいのか
に分けてお届けします。
今回の「満足度の高い研修と質疑応答 編」は
・なぜ質疑応答が大切なのか
・質疑応答をすると何が起きるのか
に当たります。
当たり前ですが、受講者が疑問を抱き、それを解消しようとしなければ質問は起きません。
あくまでも受講者側の状況・状態ですから、それを講師がどうこうするには限界があると思います。
ですが、
・興味深い内容を準備する
・関心が持続するような順番で情報を提供する
・研修後の応用の仕方を考える余地を残す
などの工夫ができるでしょう。
これも当たり前ですね。受講者が質問することのできる時間や機会がなければ質問は起こりません。
そのため、講師は
・いつ、どのようなときに質問を受け付けるか(質疑応答の時間? 随時?)
・オンライン研修だったらどのように質問を受け付けるか(マイク? チャット?)
・講師はどのようなタイミングで質問に答えるか(その都度? 状況によっては後で?)
などを受講者に明確に伝える必要があります。
それでも質問がでないとしたら、受講者は「ホントに質問してもいいのかな」と不安に思っているのかもしれません。
となると、その研修会場は、またはミーティングルームは、質問をしやすい雰囲気や場になっていない、ということです。
講師しては、
・研修自体を安心、安全な場として進行する(自他尊重、守秘義務などの約束事を明確に伝える)
・質問という行為に肯定的な意味付けをする(新たな視点や他の受講者の学びになるので大歓迎です、など)
・質問はウェルカムであることを示す
特に最後ですが、本当は質問を受け付けたくない講師が「質問は大歓迎です」といったところで、その内面は言動に表れます。そして、受講者に伝わるのは「なんか質問してはいけない感じ」です。
研修にとって豊かな質疑応答は大切な事ですが、それがあなたにとってOKでないことなら無理はしないことです。質問大歓迎と言って受け付けたくない雰囲気を出すくらいなら、初めから質問を受け付けない方がよいでしょう。
質問行動についてのある論文があります。受講者が「質問」という行動をとる上で、どのような要因がプラスに、またはマイナスに働くかを研究したものです。
その研究では、項目の一つに「質問しやすい状況認識」がある、という仮説を立てました。そして、受講者が何を重要視して質問しやすい/しにくいを判断するかを調査したのです。
結果、「発言しやすい雰囲気」や「少人数」「まわりが質問する」を抑えて、重要度第一位は「発表者が親しみやすい」でした。どんなに内容が良くても、雰囲気や場を整えても、講師が親しみやすくなければ受講者は質問してくれない可能性がある、ということです。
これに関しては……。誠実に親しみやすく研修を行うしかありませんね。
さあ、私たち講師ができるだけの場を整えて、工夫をし、受講者から質問を引き出して、適切な応答をしたとします。
すると、研修にとってどのようないいことが起きるのでしょうか? 以下に列挙してみます。
・受講者の疑問点が解消される(受講者は満足するでしょう)
・他の受講者の質問が学びになる(思ってもみなかった視点、観点が得られることも)
・更なる疑問が湧き、それを質問することで更に学びが深まる(好奇心は学びの一番の材料です)
・講師と受講者の関係性が強化される(信頼関係が深まります)
・受講者はより主体的に参加する(お客さんではなく、研修を構成する一員として機能してくれます)
・受講者の緊張が解れる(思いを発言することはストレスやプレッシャーを発散させます)
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佐々木 啓
▼所属:株式会社チーム医療ラーニングS / 株式会社チーム医療ラーニング
▼資格:公認心理師 / ICC認定国際コーチ / 同国際チームコーチ/同国際ライフコーチ / ICNLP認定NLPトレーナー
▼略歴:1998年より、教育研修会社にて心理療法研修のマネジメントに従事。国内外の一流心理療法家の技能と研修ノウハウを学ぶ。10年間の修行の後、2008年から自らも講師として活動を開始。現在に至る。その人の特性や課題に最もマッチしたアプローチを、多種多彩な心理療法から選んで構成する研修やコーチングが強み。「不健康な状態で行う思考の質などたかが知れている」を信条に、まず個人の心身を整える実習やエクササイズが得意。