これでもう怖くない! 研修における質問の受け方・答え方-その4 効果的な質疑応答のための4つのプロセス(質問に答える) 編

現代は情報が満ち溢れています。そのような中、あえて「研修」を行う意義の一つに、講師と受講者、受講者同士のやりとり、つまり双方向コミュニケーション、コール&レスポンスがあります。

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さて、研修における双方向コミュニケーションにおいて重要なのが質疑応答の時間です。

「良い質問の答えは良い研修をつくる」という言葉もあるくらいです。

 

ですが、講師として活動している方の中にも

質問に上手く答えられるか不安……」

「質問が終わっていないのについ答え始めてしまう……」

「質問がない時の沈黙の時間に耐えられない……」

「どうやって答えてよいか分からない……」

という方もいらっしゃるようです。

 

そこで今回は、

これでもう怖くない! 研修における質問の受け方・答え方

その4 効果的な質疑応答のための4つのプロセス(質問に答える) 編

をお届けします。

 

オンライン研修、リアル研修、どちらにも応用できる内容です。

質疑応答の時間をより良いものにすることで、あなたの研修がパワーアップすること間違いなしです。

質疑応答に関してはさまざまな視点で語ることができます。

そこで、このテーマをいくつかに分けてお届けします。

 

・なぜ質疑応答が大切なのか

・質疑応答をすると何が起きるのか

については、満足度の高い研修と質疑応答 編 を

 

・何を準備すれば活発な質疑応答になるのか

については、質問しやすい場づくりの工夫 編

 

・良い質疑応答のために、どのように質問を聴けばよいのか

については、効果的な質疑応答のための4つのプロセス(質問を聴く) 編 をご覧ください。

 

今回の「効果的な質疑応答のための4つのプロセス(質問に答える) 編」は、引き続き

・良い質疑応答のために、どのように質問に答えればよいのか

についてご紹介します。

効果的な質疑応答のための4つのプロセス(質問に答える)

受講者からの質問を受け付けた時には、まず自分が良い状態でいることを確認する。

そして、質問者が満足する形で答えるために、質問の内容や、必要なら質問の意図を確認する。

これが前回の内容でした。

 

では、今回もまた、

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このような質問を受けたと想定しましょう。

前回分かったのは、受講者が聴きたいのは「良い質疑応答さえできれば本当に良い研修になるのか」という疑問があり、それに対する回答(講師の考え)を知りたいというものでした。

引き続きこの質問を使って「答える」というプロセスを見ていきましょう。

3.質問に答える

応答

実際に質問に答えるにあたって、質問者に対して、または研修の受講者全体に対して最も役に立つかを考えて、解答方法を工夫しましょう。

 

・直接的に答える

答えが一つであったり、はい/いいえで答えられるものであったり、答えが確定しているものなら、直接的に答えるのが一番役に立つことがあります。

例.「良い質疑応答は良い研修の大切なパーツです。ですが、それは一つのパーツに過ぎません。例えば他にも……」 

 

・実際にやって見せる

講師がその場でやって見せることができるテーマならこれが一番説得力があります。例えばある対人援助スキルに対する質問があったとしたら、質問者を相手にして実践してみて、その効果を実感してもらう、などです。

例.「それでは次の1コマは質疑応答だけに最大限のエネルギーを使って、その他のことはほどほどにやってみます。何が起きるか観察してみてください」

(この質問の回答方法としては無理があります)

 

・質問者に質問する

質問をする人は大抵、質問に対する自分自身の考えを持っています。その考えを話してもらうよう促してみましょう。ズバリ正解かもしれませんし、その考えを元に答えを伝えられるかもしれません。

例.「あなたはどうお考えですか? 良い質疑応答だけできればよい研修になりますか? それとも他に何が必要でしょうか?」

 

・グループに質問する

自分でも答えを知りたい質問、受講者に考えてもらった方が学びになる質問は、受講者に振ってみましょう。小グループに分けてディスカッションしてもらい、代表者に発表してもらいます。参加者同士のエネルギー交換や研修に飽きさせないための作業にもなります。

例.「興味深い質問なので他の方の意見も聴いてみましょう。では〇分間差し上げますので、〇人一組になってこのことについて話し合ってみてください……」

 

・質問者に作業してもらう

言葉で説明するより体験してもらった方が学びになる、または話が早いような質問の場合に使います。状況によりますが「もし……の場合はどうなるのでしょうか」「これを行ったら何が起きるのでしょうか」のような「what if 型」の質問に効果があります。

例.「それではあなたが次にどこかの研修に参加した時、良い研修なら何がそうさせているのか、逆に良くない研修なら何がそうさせているのかを観察してきてください……」

(この質問の回答方法としては無理があります)

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応答時に気をつけたいこと

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その他、質問に答えるときに気をつけておきたいポイントをいくつか挙げます。

 

・ピンポイントに的確に答える

訊かれたことに答える、というのが質疑応答の基本です。そのためにも、前回取り上げた質問を最後まで聴き、内容を理解したことを確認することは大切です。

また、回答は一文一義。ひとかたまりの文章で伝える意味は一つ、それも一文を短くしたほうが受講者に伝わりやすいです。

 

・知らない、わからない時は、そのように言う

講師はある分野の専門家であって、全知全能ではありません。すべての質問に答えられなくても当たり前です。たとえそれが自分の専門分野であってもです。

講師の立場を取り繕うとして知らないことに無理して答えようとすると、その不一致の状態が非言語のメッセージとして現れます。そして、受講者はそれをキャッチします。

知らないことは知らない、分からない、と答える方がよほど受講者に自己一致した印象を与えます。そして、その質問に対しては調べて改めて答えればよいのです。

 

・不完全な点、矛盾点を指摘された時は、一旦受け入れる

受講者は、あなたが研修で話した内容について不完全な点がある、または矛盾点がある、とそのような質問をしてくるかもしれません。

実際にあなたの話に不完全な点、矛盾点があるならそれを認め、修正や追加の説明が必要にある場合があります。

そのためにも、そういった質問や指摘に対しては、「確かにそういった考えはあるかもしれない」と一旦受け入れて考えてみましょう。

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批判的、攻撃的な質問を受けた時

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「質問者の多くは知りたいことを知りたいだけ」と言いました。が、中には質問の形を取って批判や攻撃をしてくる受講者もいます。

私たち講師の仕事は、自説の正しさをめぐって受講者と論争することではありません。そのような批判や攻撃は、受講者が自分の考えを持っていて、それを表明したいことの現れの場合が多いです。

これを研修に活用します。具体的には以下のプロセスを踏むことで、質問者の思いをくみ取って、批判や攻撃を他の受講者の学びに変換できる可能性があります。

 

・まず質問を聴き、整理して内容を理解する

繰り返しになりますが質疑応答の基本です。ただし、質問者が度を越えて怒りを表現しない限りです。その場合は、「今のままではあなたの話を聴くことはできない」と率直に伝える必要があるかもしれません。

例.「そもそも質疑応答と研修の質の高さは関係ないと思います。こじつけだと思います」

「なるほど。質疑応答と研修の質の高さは関係ない、というのがあなたのご意見ですね?」

 

・そのように考える理由を聞く

あらゆる行動には意味があります。研修と関係があるかないかは分かりませんが、批判や攻撃をする受講者にもそうさせる理由があります。

発言や意見を否定するのは簡単ですが、そこから建設的な方向に向かうのはむつかしいです。

ここでは、何がそのような発言をさせたのか、その理由を聴いてみましょう。

例.「……ご意見ですね? どのような理由からそのように思われるのでしょうか?」

「講師は高度な専門知識を教えるのが仕事で、それができていれば質問なんか出ません」

「なるほど。質問があること自体講師の教え方が良くないと、そのようにお考えということで私の理解はあっていますか?」

 

・質問者の考えに理解を示す

どのような理由から批判的な意見を言ったのかが分かりました。そうすれば理解を示すことができます。

ここで大切なのは、理解を示すことと同意することはイコールではない、ということです。

これを混同している人は、「理解を示すことは同意することだから、相手の話しや理屈が分かったと示してはいけない」という態度を取ろうとします。

もちろん同意できない意見は同意できません。ただし、仮にそれがどれだけおかしなことでも「あなたが○○という理由から××という考えを持っている」ということは理解できるはずです。

それを伝えることで、質問者には「私の考えや気持ちは受け止めてもらえた」と思ってもらえます。これはとても大切な事です。

例.「あなたがそのような考えをお持ちなことは分かりました。コメントありがとうございました」

 

・ここから先は状況次第

質問者の気持ちを受け止めたのち、「私には違う考えがあります」と自分の研修内容にもどる。

「質疑応答と研修の質に関係がある、と仮定したら新しい視点が得られるかも知れませんね」とユーモアを使う。

「面白い意見だったのでグループでディスカッションしてみましょうか。質疑応答と研修の質に関係はあるか否か?」と作業を課す。

一般的に人は、賛成はされなくても自分の意見をしっかりと聞いてもらえたと感じれば満足します。

いずれにせよ、批判的、攻撃的な意見や質問をしてきた方を厄介者扱いしないことです。

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4.質問者の希望に応えたかを確認する

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あなたは質問に答えました。ですが、質疑応答はまだ終わっていません。大勢の方が忘れているプロセスが最後に待っています。

それは、自分の答えが質問者の望んでいるものであったかを確認することです。

具体的には、

「これが質問のお答えになりましたか?」

と確認します。

 

・返事がハイならお礼を言って、ここで初めて一つの質問に答えたことになります。

 

・返事がイイエなら、「効果的な質疑応答のための4つのプロセス(質問を聴く) 編」の 「2.質問の内容を確認する」に戻って、何を答えればよいのかの再確認をしましょう。

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まとめ

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研修の質、受講者の満足度を高めるために、質疑応答をどのように行えばよいか。

このテーマを四回にわたってお届けしてきました。

 

まず、

・人はどのような状況で質問するのか

・適切な質疑応答を行うとどのような影響があるのか

という私たちが質疑応答を重要視する理由から始めました。

 

そして、

・質疑応答を活発にするための場づくり

つまり環境の話に移りました。

 

最後に実際に質疑応答を行うプロセス、そして注意点をお伝えしました。

1.自分の状態をチェックする

2.質問の内容を確認する

3.質問に答える

4.質問者の希望に応えたかを確認する

です。

 

これらの内容があなたの研修を豊かにする手助けになったら嬉しいです。

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佐々木 啓

▼所属:株式会社チーム医療ラーニングS / 株式会社チーム医療ラーニング

▼資格:公認心理師 / ICC認定国際コーチ / 同国際チームコーチ/同国際ライフコーチ / ICNLP認定NLPトレーナー

▼略歴:1998年より、教育研修会社にて心理療法研修のマネジメントに従事。国内外の一流心理療法家の技能と研修ノウハウを学ぶ。10年間の修行の後、2008年から自らも講師として活動を開始。現在に至る。その人の特性や課題に最もマッチしたアプローチを、多種多彩な心理療法から選んで構成する研修やコーチングが強み。「不健康な状態で行う思考の質などたかが知れている」を信条に、まず個人の心身を整える実習やエクササイズが得意。

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